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第二十三回日本伝統文化振興財団賞・第八回中島勝祐創作賞 贈呈式

「日本伝統文化振興財団賞」は、伝統文化の保存・振興・普及を目的とする当財団の顕彰事業の一環として設立された賞です。第二十三回の本年は、山田流箏曲の演奏家、萩岡松柯(はぎおかしょうか)さんが受賞しました。

また、長唄三味線演奏家で数多くの舞踊曲を作曲した東音中島勝祐(とうおん なかじま かつすけ)氏の功績を記念した中島勝祐創作賞の第八回受賞作品には、東音高橋智久(とうおん たかはし ともひさ)さんの「狐狸廓化競(こりさとのばけくらべ)」が選ばれました。

令和元年7月、東京・千代田区の紀尾井小ホールで行なわれた両賞の贈呈式と記念演奏会についてお伝えします。

文・写真 じゃぽマガジン編集部

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 第二十三回 日本伝統文化振興財団賞

 第八回 中島勝祐創作賞


藤本理事長

令和元(2019)年7月1日(月)、第二十三回日本伝統文化振興財団賞と第八回中島勝祐創作賞の贈呈式が、東京都千代田区の紀尾井小ホールで開催されました。

初めに当財団の藤本草理事長の挨拶があり、受賞の萩岡松柯さんと東音高橋智久さんが紹介されました。

来賓を代表して文化庁の平山直子文化財第一課長が祝辞を述べ、受賞者お二人のさらなる活躍を祈念されました。


平山直子文化庁文化財第一課長

続いて、当財団設立基金元、株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメントの斉藤正明代表取締役社長から寄せられたメッセージが紹介されました。

第二十三回日本伝統文化振興財団賞の表彰に先立ち、選考委員の田中英機さんが選考経過を披露しました。

表彰を受けた萩岡松柯さんに、第五回日本伝統文化振興財団賞受賞者で、同じ山田流箏曲の演奏家、山登松和(やまと しょうわ)さんからお祝いの花束が贈呈されました。

萩岡さんは受賞のご挨拶として、芸名を改名した大きな節目の年に受賞したことに触れ、これを機にますます精進したいと話されました。



次に第八回中島勝祐創作賞について審査委員の久保田敏子さんから、ジャンルも編成も異なる9作品の応募があったこと、受賞作品が中島勝祐師の作品にも通じる仕掛けの面白さがあったことなど紹介されました。

表彰に続いて、中島勝祐記念会代表の中島久子さんから目録が、昨年受賞者の鶴澤津賀寿さんから花束が贈呈されました。東音高橋智久さんは、師である菊岡裕晃、中島勝祐両師の勧めで創作を始めたが、それが結果的に古典の勉強にもなったことなどお話されました。


贈呈式の後、休憩をはさんで両受賞者の記念演奏が披露されました。

萩岡松柯さんは山田検校作曲の大曲「熊野(ゆや)」の箏を、師であり、父である萩岡松韻さんとともに演奏しました。時間の都合により一部割愛されましたが、財団賞副賞のDVD(本年10月発売予定)には全曲が収録されますので、その高い技量が評価された演奏をぜひお聴きいただきたいと思います。


東音高橋智久さんは自らの三味線で、受賞作品「狐狸廓化競」を披露しました。鳴物が効果的に使われ、途中で音色の違う三味線に持ち替えるなど、変化に富んだ楽しい長唄です。こちらはCDの発売が予定されています。


今後のお二人の、ますますのご活躍を願います。


受賞記念演奏 プログラム

第二十三回 日本伝統文化振興財団賞

記念演奏 山田流箏曲「熊野(ゆや)」

箏  萩岡松柯
   萩岡松韻

三弦 鈴木厚一

笛  福原徹彦

第八回 中島勝祐創作賞 

受賞作品 「狐狸廓化競(こりさとのばけくらべ)」

(かず はじめ 作詞 東音高橋智久 作曲)

唄   東音 西垣和彦
    東音 谷口之彦
    東音 小島英裕

三味線 東音 高橋智久
    東音 山口 聡
    東音 簑田弘大

打ち物 望月 左喜十郎
    梅屋 喜三郎
    住田 福十郎

笛   福原 百七


2019年2月〜4月の作品情報

2月20日発売

真言宗 豊山聲明 二箇法用付 大般若転読会

VZBG-61(DVD)
2019年2月20日 発売 
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3月20日発売

津花恋唄/オンナ 二人 横浜

VZCG-10578(12cmシングルCD)
2019年3月20日 発売 
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祇園灯ろう/春日とよ栄芝の小唄

VZCG-820(CD)
2019年3月20日 発売 
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4月24日発売

安藤政輝 宮城道雄を弾く 7 春を謳う

VZCG-821(CD)
2019年4月24日 発売 
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2018年11月、12月発売作品のご案内

2018年12月26日発売

 

音頭「おどりの輪」/ビューティフル・サンデー

VZCG-10577(CD)
2018年12月26日 発売 
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音頭「おどりの輪」/ビューティフル・サンデー

VZSG-10650(カセット)
2018年12月26日 発売 
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2018年11月21日発売

 

 

藍染川/文殊獅子

VZCG-10576(CD)
2018年11月21日 発売 
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藍染川/文殊獅子

VZSG-10649(カセット)
2018年11月21日 発売 
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2018年11月7日発売

 

フジヤマ踊り/瀬戸のみかん船

VZCG-10575(CD)
2018年11月7日 発売 
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「伝統芸能の現在と未来~古典継承の最前線を聴く~」(1)

当財団設立から25年目を迎えた本年、発起人の皆様の呼びかけに200名を超える各界の方々がお集まり下さいまして、去る7月19日東京白金八芳園内で「日本伝統文化振興財団創立二十五周年を祝う会」が催されました。また当財団の記念事業と致しまして、「伝統芸能の現在と未来〜古典継承の最前線を聴く〜」を、平成30年度(第73回)文化庁芸術祭協賛、公益財団法人新日鉄文化財団助成公演として、11月6日東京千代田区の紀尾井ホールで開催致しました。公演当日は、彬子女王殿下のご臨席を賜り、また20数か国の在日大使館から、大使・公使などたくさんの海外外交官の方々がご出席下さいました。

ビクターを基金元として平成5年に設立されました当財団は、発足以来今日まで日本の伝統文化の記録・保存を主業務として、四半世紀にわたり録音・映像作品の刊行を続け、これまで2000タイトルを超える伝統芸能ディスクの多くを廃盤にすることなく現在も世に送り続けています。また、こうした記録・保存事業の推進と共に、伝統芸能の幅広い分野のすべてを対象に、それぞれのジャンルの将来を担う若い世代の演奏家を毎年選出し、その優れた技芸を記録したCD、DVDを公刊する「日本伝統文化振興財団賞」を設立し、22年間にわたり毎年1名顕彰して参りました。

この度の記念公演には、様々な伝統芸能ジャンルから選ばれた22名の受賞者中から19名の方々が出演され、全10種目の芸能ジャンルで優れた技芸をご披露下さいました。まさに、古典芸能の「ガラコンサート」と呼ぶに相応しい本公演の一端を、演目解説、詞章、出演者プロフィールなどのレポートを通じて、皆様にご紹介申し上げたいと存じます。

なおこの場をお借りして、財団四半世紀の歩みを振り返り、今後の新たな目標へと向かう節目の催しとして企画致しました本公演の開催に際し、ご協賛を賜りました文化庁様、ご助成を賜りました新日鉄住金文化財団様、ご出演下さいました財団賞受賞者の皆様、特別出演を賜りました人間国宝の新内仲三郎様、竹本駒之助様をはじめ助演者の皆様、本公演の開催にご尽力を賜りましたたくさんの方々に心より厚く御礼を申し上げます。

 

公益財団法人日本伝統文化振興財団

理事長 藤本 草

 


「伝統芸能の現在と未来 ~古典継承の最前線を聴く~」

2018年11月6日(火)18時開演 紀尾井ホール

【プログラム】

  1. 狂言「柿山伏」
  2. 琉球舞踊「かせかけ」(古典女踊「綛掛」)
  3. 上方舞「ゆき」
  4. 新内「日高川 飛込みの場」
  5. 清元「鳥刺」
  6. 女流義太夫「本朝廿四孝 十種香の段」
  7. 地歌「根曳の松」
  8. 大和楽「おせん」
  9. 箏曲「楓の花」
  10. 長唄「勧進帳」

プレゼンター 野川美穂子(東京藝術大学音楽学部講師)

野川美穂子

【公演内容】

(文中敬称略。★財団賞受賞者)

第1部(5演目)

1、 狂言「柿山伏」

シテ(山伏) 山本泰太郎★
アド(柿主) 山本則孝

(解説)

狂言は、能と共に約650年の歴史を持つ、現存する世界最古の舞台芸術のひとつで、同じ猿楽から発展しましたが、歌舞を中心とした能とは異なり、対話を中心とした科白劇となりました。大がかりな舞台装置は用いず、言葉や仕草によってすべてを表現します。狂言の大きな特徴は「笑い」で、中世の庶民の日常や説話などを題材に人間の習性や本質を鋭く切り取り、「笑い」や「おかしみ」に転じます。様々な登場人物が織りなす普遍的な人間の姿を描きます。2008年、能とともに世界無形文化遺産に登録されました。

《柿山伏》は狂言演目として最もポピュラーな作品のひとつで、あらすじは次の通りです。「修行を終えた山伏が家路の途中でのどが乾いてしまいます。ふと見あげると柿がたわわに実っていることに気づき、木に登って柿を食べて渇きを癒やしますが、柿の木の持ち主に無断で柿を取っていたことに気づかれます。持ち主から木の上にいるのは人ではない、と言われるままに鳴き真似をしますが、最後に鳥なら飛ぶものと言われ、飛び降りて怪我をしてしまいます。」
自分の罪を隠そうとする人の姿を描きつつ、権威の象徴としての山伏への風刺も込められた作品です。

【プロフィール】
山本泰太郎(やまもと やすたろう)
《能楽師狂言方大蔵流》/第15回(2011年)受賞者

1971年埼玉県狭山市生まれ。故・山本則直長男。父及び山本東次郎に師事。76年景英後援会にて狂言「靭猿(うつぼざる)」の小猿で初舞台を踏む。88年国立能楽堂開場五周年記念にて「千歳(せんざい)」を披く。91年山本会別会にて「三番三(さんばそう)」を披く。92年研究会別会にて語「那須」を披く。94年国立能楽堂狂言の会にて「獅子聟(ししむこ)」を披く。96年山本会別会追善公演にて「釣狐(つりぎつね)」を披く。2005年山本会別会にて「花子(はなご)」を披く。11年1月、平成22年度(第65回)文化庁芸術祭において、「第29回花影会における『月見座頭』の演技」により芸術祭優秀賞を受賞。

「伝統芸能の現在と未来~古典継承の最前線を聴く~」(2)

前ページ:日本伝統文化振興財団創立25周年記念公演
「伝統芸能の現在と未来~古典継承の最前線を聴く~」(1)から続く

第2部(5演目)

1、女流義太夫「本朝廿四孝 十種香の段」

(近松半二・三好松洛・竹本三郎兵衛ほか共作)
浄瑠璃 竹本駒之助(人間国宝)
三味線 鶴澤津賀寿★

女流義太夫は、江戸後期(19世紀初頭)に始まった女性による義太夫語りで、主に人形や歌舞伎を伴わない素浄瑠璃で演奏されます。明治維新後に寄席芸として隆盛をみるようになり、19世紀末から20世紀初頭には歌舞伎と二分するほどの爆発的な人気を得ました。関東大震災(1923年)を契機に、次第に人気を失っていきましたが、女性らしい細やかな中に迫力のある素浄瑠璃の魅力は、今も多くのファンを獲得しています。

《本朝廿四孝 十種香の段》は 大坂竹本座で初演された人形浄瑠璃義太夫です。「十種香」はその四段目で、戦乱の世で争いを続けていた武田信玄と上杉謙信の、それぞれの息子武田勝頼と娘八重垣姫の恋情と、狐の霊力が乗り移った八重垣姫の起こす「狐火」の奇跡が語られます。

(詞章)

〽臥ふし所どへ、
〽行く水の、流れと人の蓑作が、姿見交わす長裃、悠々として一間を立ち出で、
蓑  作「我民間に育ち、人にお面もてを見知られぬを幸いに、花作りとなって入り込みしは、幼君の御身の上に、もし過ちやあらんかと、よそながら守護する某(それがし)、それと悟って抱えしや、ハテ合点の行かぬ」

〽とさしうつむき、思案にふさがる一間には、館(やかた)の娘八重垣姫、許嫁(いいなずけ)ある勝頼の、切腹ありしその日より、一間所に引きこもり、床に絵姿かけまくも、御経読誦の鈴(りん)の音。こなたも同じ松虫の、鳴く音に袖も濡衣が、今日命日を弔いの、位牌に向かい手を合わせ、
濡  衣「広い世界に誰あって、お前の忌日命日を、弔う人も情けなや。父御の悪事も露知らず、お果てなされたお心を、思い出すほどおいとしい。さぞや未来は迷うてござろう。女房の濡衣が、心ばかりのこの手向け、千部万部のお経ぞと、思うて成仏してくださんせ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、なんまいだ」
蓑  作「まことに今日は霜月廿日、わが身代わりに相果てし勝頼が命日、暮れ行く月日も一ひと年とせ余り、南無、幽霊出離(しゅつり)生死(しょうし)と頓ん生菩提(しょうぼだい)」

八重垣姫「申し勝頼様、親と親との許嫁、ありし様子を聞くよりも、嫁入りする日を待ち兼ねて、お前の姿を絵に描かし、見れば見るほど美しい。こんな殿御と添い臥しの、身は姫御前の果報ぞと、月にも花にも楽しみは、絵像のそばで十種香の、煙も香華(こうげ)となったるか。回向しょうとてお姿を、絵には描かしはせぬものを。魂返す反魂香(はんごんこう)、名画の力もあるならば、可愛とたった一言の、お声が聞きたい、聞きたい」と、
〽絵像のそばに身をうち臥し、流涕(りゅうてい)こがれ見え給う。

【プロフィール】
竹本駒之助(たけもと こまのすけ)
《女流義太夫浄瑠璃》【特別出演(人間国宝)】

淡路島出身。大阪にて竹本春駒に入門。文楽の諸師匠方に師事する。1952年二代鶴澤三生を相三味線に東京で演奏活動を始める。53年から豊竹つばめ太夫(後の竹本越路太夫)に師事。96年第26回モービル音楽賞受賞。99年重要無形文化財個人指定保持者(人間国宝)に認定される。2003年紫綬褒章、08年旭日小綬章受章。08年日本伝統文化振興財団よりCD「人間国宝 女流義太夫竹本駒之助の世界」を発売(第64回文化庁芸術祭賞優秀賞受賞)。15年KAAT竹本駒之助公演で第70回文化庁芸術祭賞大賞受賞。17年文化功労者。義太夫節保存会会長。(一社)義太夫協会理事。

鶴澤津賀寿(つるざわ つがじゅ)
《女流義太夫三味線方》/第4回(2000年)受賞者

東京生まれ。1984年竹本駒之助に入門。三味線を四代目野澤錦糸に師事。86年駒之助の義母、鶴澤三生の幼名津賀寿を継ぎ、本牧亭にて初舞台。鶴澤重輝の預かり弟子となって義太夫節三味線の研鑽に努める。94年から師匠駒之助の相三味線として技芸を磨き、本格的な女流義太夫三味線方として活躍するとともに、勉強会「ひこばえ」による研究成果や、花組芝居や郡司かぶきへの参加など、未来を志向した試みにも意欲を示している。
91年度芸団協助成新人奨励賞、95年度豊澤仙廣賞、96年度芸術選奨文部大臣新人賞、97年度清栄会奨励賞を受賞。2018年作曲作品「那須与一弓矢誉」で中島勝祐創作賞を受賞。重要無形文化財「義太夫節」総合指定保持者。

2、 地歌「根曳の松」(詞 松本一翁 /曲 三つ橋勾当/箏手付 中能島欣一)

歌・三弦 藤本昭子★
歌・箏 山登松和★
尺八 善養寺惠介★

地歌は、戦国時代(16世紀)に琉球を経て中国から伝来した三弦楽器を、その当時平家琵琶を伝承していた男性盲人音楽家が琵琶の撥で演奏する三味線に改良したことによって始まった、三味線音楽のなかで最も古い歴史を持つ三味線伴奏の歌曲です。当時の江戸唄に対し、京都・大坂の地の歌であることから「地歌」と称されました。また地歌は、同じ男性盲人音楽家が伝承を担っていた箏曲や胡弓曲とのコラボレーションが盛んに行われ、明治以降は胡弓に代わり尺八が加わる三曲合奏として現代まで広く親しまれています。なお地歌では、三味線を三弦と称することが通例となっています。

《根曳の松》は、19世紀初めに大坂で活動した三つ橋勾当作曲の三弦伴奏歌曲で、「三役物」とも称される地歌で最も重要な曲とされています。三弦と合奏される箏は、大坂の峰崎勾当、あるいは京都の八重崎検校作曲と伝えられます。「根曳の松」は、正月に門口に付ける根の付いた松飾りで、詞章中の「門松」を言い換えて曲名としたものです。本日は流派が異なる生田流と山田流の共演で、山田流の箏は中能島欣一の手付です。

(詞章〉

〽神風や、伊勢の神楽(かぐら)のまねびして、荻にはあらぬ笛竹の、音も催馬楽(さいばら)に、吹き納めばや。(手事)〽難波津の、難波津の、葦原に、【昇る朝日のもとに棲む、田蓑の鶴の声々を、箏の調べに聞きなして。】(手事)〽軒端に通ふ春風も、菜蕗(ふき)や茗荷のめでたさを、野守が宿の門松は、老いたるままに若緑、四方(よも)麗かになりにけり。(手事)〽そもそも松の徳若に、万歳祝ふ君が代は、蓬(よもぎ)が島もよそならず、秋津洲(あきつしま)てふ国の豊かさ。

【プロフィール】
藤本昭子(ふじもと あきこ)
《地歌》/第7回(2003年)受賞者

大阪府出身。九州系地歌箏曲演奏家。幼少より祖母阿部桂子、母藤井久仁江に箏の手ほどきを受け4歳で初舞台。8歳より三弦の手ほどきを受ける。1995年よりリサイタル、2001年より伝統音楽の継承と古典演奏の新たな可能性を追求する場として「地歌ライブ」、08年より全英語解説による「地歌 Jiuta」公演を連続開催。アメリカ、イギリス、オランダ、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、スイスなど海外公演も重ねて開催している。
15年4月藤井昭子から藤本昭子に改名。文化庁芸術祭新人賞、伝統文化ポーラ賞奨励賞、文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。
生田流協会理事、(公社)日本三曲協会、箏曲女流協会会員。正派音楽院講師。銀明会副会長。

山登松和 (やまと しょうわ)
《山田流箏曲》/第5回(2001年)受賞者。

1966年東京生まれ。祖母山登愛子に山田流箏曲の手ほどきを受け、後に中能島欣一、鳥居名美野に師事。東京藝術大学音楽学部邦楽科で増渕任一朗、六代山勢松韻に師事し、安宅賞を受賞。91年同大学大学院修士課程修了。99年七代山登松和を襲名し、国立劇場にて披露演奏会を行う。山田流を深めるのに重要な河東節、荻江節の三味線を、山彦さわ子、荻江さわに学び、山田流の古典箏曲演奏家として注目を集める。96年河東節の山彦節子より山彦登の名を、2003年荻江さわより荻江登の名を許される。
02年「第一回山登松和の会」で文化庁芸術祭優秀賞を受賞。08年松尾芸能賞新人賞受賞。(公社)日本三曲協会常任理事、山田流箏曲協会理事、跡見学園中学・高等学校課外箏曲講師などを務める。山登会主宰。

善養寺惠介(ぜんようじ けいすけ)
《古典尺八》/第6回(2002年)受賞者

1964年東京生まれ。6歳より虚無僧尺八の手ほどきを受ける。東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業、同大学院修士課程修了。同大学在学中は山口五郎(人間国宝)に師事。99年第1回リサイタルを開催以来、現在に至るまで13回を重ね、2017年のリサイタルでは文化庁芸術祭大賞を受賞。2000年2月、尺八教則本「はじめての尺八」(音楽之友社刊)を執筆。02年10月、世界宗教者国際会議(世界銀行主催、イギリス・カンタベリー大聖堂)にて招待演奏。17年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。古典を中心とした演奏活動のほか、関東各地にて尺八普及のための教授活動を行っている。
公式 web site http://zenyoji.jp/

第二十二回日本伝統文化振興財団賞・第七回中島勝祐創作賞 贈呈式

日本伝統文化振興財団賞は、伝統文化の保存・振興・普及を目的とする当財団の顕彰事業の一環として設立された賞です。第二十二回の本年は、新内節の演奏家、新内多賀太夫(しんない たがたゆう)さんが受賞しました。

また、長唄三味線演奏家で数多くの舞踊曲を作曲した東音中島勝祐(とうおん なかじま かつすけ)氏の功績を記念した中島勝祐創作賞の第七回受賞作品には、鶴澤津賀寿(つるざわ つがじゅ)さんの「那須与一弓矢誉(なすのよいちゆみやのほまれ)」が選ばれました。

平成30年7月、東京の八芳園で行なわれた両賞の贈呈式と記念演奏会についてお伝えします。

文・写真:じゃぽマガジン編集部

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 第二十二回 日本伝統文化振興財団賞
第七回 中島勝祐創作賞

 

平成30年7月19日(木)午後5時から、東京・港区白金台の八芳園において第二十二回日本伝統文化振興財団賞および第七回中島勝祐創作賞の贈呈式が開催されました。

冒頭に当財団の藤本草理事長の挨拶があり、受賞者のお二人が紹介されました。

続いてご来賓の文化庁の山﨑秀保文化財部長が、宮田亮平文化庁長官からの祝辞を代読されました。


第二十二回日本伝統文化振興財団賞の選考経過と今回の贈賞理由について、選考委員を代表して織田紘二さんが披露され、加えて新内多賀太夫さんが最近の公演でも演奏とともに作曲でも活躍されている様子など紹介されました。

表彰を受けた後、新内多賀太夫さんは受賞の挨拶を延べ、他の分野での作曲の折にも、新内節の良さを意識していると結びました。

続いて第七回中島勝祐創作賞の贈呈に移り、審査委員の久保田敏子さんから審査の経緯と受賞作「那須与一弓矢誉」について紹介があり、作曲者の鶴澤津賀寿さんが表彰を受けました。



 


次に鶴澤津賀寿さんの受賞作「那須与一弓矢誉」が、こちらも人間国宝の竹本駒之助さんの浄瑠璃、津賀寿さん自身の義太夫三味線で演奏されました。「平家物語」の「扇の的」に題材をとった新作です。


なお、藤本理事長が挨拶のなかで、直前に西日本を襲った豪雨の被災地への支援を呼びかけました。来場された方々から合計2万円の義援金をお預かりし、後日日本赤十字社に託しましたことをご報告いたします。


受賞記念演奏 プログラム

第二十二回 日本伝統文化振興財団賞

記念演奏 新内節「若木仇名草 蘭蝶 四ツ谷」
浄瑠璃  新内 多賀太夫(受賞者)
三味線  新内 仲三郎(人間国宝)
上調子  鶴賀 喜代寿郎

第七回 中島勝祐創作賞

受賞作品「那須与一弓矢誉」(鶴澤 津賀寿 作曲 村 尚也 作詞)
浄瑠璃 竹本 駒之助(人間国宝)、竹本 越孝
三味線 鶴澤 津賀寿(受賞者)、鶴澤 賀寿
鳴 物 望月 太意三郎

次ページ:日本伝統文化振興財団創立二十五周年を祝う会

関連作品


中島勝祐創作賞 第七回 那須与一弓矢誉

VZCG-819(CD)
2018年10月24日 発売 
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日本伝統文化振興財団創立二十五周年を祝う会

前ページ:「第二十二回日本伝統文化振興財団賞・第七回中島勝祐創作賞 贈呈式」

 

平成30年は当財団が設立されて二十五年目にあたります。それを記念して「日本伝統文化振興財団創立二十五周年を祝う会」が、贈呈式と同日、7月19日の午後6時30分から、八芳園内で会場を移して催されました。贈呈式に引き続いて出席された方も多く、発起人の呼びかけに、約200名の方々がお集まりくださいました。

「祝う会」は、今年の日本伝統文化振興財団賞の受賞者、新内多賀太夫さんの新内流しで幕を開けました。上調子の鶴賀喜代寿郎さんとともに三味線を弾きながらゆっくりと登場し、大きな拍手で迎えられました。



それぞれに当財団の果たしてきた役割や今後への期待など、温かいお言葉が寄せられました。
続いて藤本理事長が感謝の意とともに、「今こそ、日本の伝統文化に携わる全ての方々が、ジャンルや流派を超え、お互いに手を結び、協力の輪を広げ、日本の伝統芸能、伝統文化の未来への継承に共に力を合わせる時なのです」と述べました。

財団基金元からは、株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント、斉藤正明社長のご挨拶が、カンパニーエグゼクティブ経営企画部長の平原雅彦さんによって代読されました。

会に出席した歴代の日本伝統文化振興財団賞(7名)、中島勝祐創作賞の受賞者(5組)が壇上で紹介され、今年の受賞者に花束が贈呈されました。

歴代の日本伝統文化振興財団賞(7名)、中島勝祐創作賞の受賞者(5組)

財団賞の新内多賀太夫さんには昨年の受賞者の菊央雄司さんから、中島賞の鶴澤津賀寿さんには第3回受賞者の萩岡松韻さんから贈られました。

中島賞の鶴澤津賀寿さんには第3回受賞者の萩岡松韻さんから花束の贈呈

乾杯の発声は、世話人代表の日本民踊・新舞踊協会理事長、田畑秀朗さん。同じく世話人を努めた、邦楽ジャーナル代表取締役、田中隆文さん、日本アコースティックレコーズ代表取締役、今泉徳人さんも壇上で乾杯しました。

その後、食事と歓談となり、この日のために遠方から駆けつけてくださった方々も含め、旧交を温めあったり、新たな親交を結ぶ姿が会場のあちらこちらで見受けられました。

中締めは、ビクター専属歌手で、昨年日本民謡協会から名人位を受章された鈴木正夫が努めました。ビクター歌手会の藤みち子さん、加賀山昭さん、志摩幸子さん、小川竜翔さん、相原ひろ子さん、菊池杜支朗さん、安藤栄子さんも一緒に舞台に上がり、にぎやかに締められました。


皆さまには、本日の会を機に作成した、当財団の二十五年の歩みをまとめた小冊子「日本伝統文化振興財団二十五年のあゆみ」をお持ち帰りいただきました。

本当に多くの方々に支えられて、二十五周年を迎えられたということを改めて実感した一日でした。今後ともご交誼ご支援のほどよろしくお願いいたします。


2018年9月・10月発売の作品情報

2018年10月24日発売

 


中島勝祐創作賞 第七回 那須与一弓矢誉

VZCG-819(CD)
2018年10月24日 発売 
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老妓抄/米川文子

VZCG-818(CD)
2018年10月24日 発売 
assocbutt_or_buy._V371070157_


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真言宗 豊山聲明 二箇法用付 大般若転読会(2枚組)

VZCG-8580〜1(CD)
2018年10月24日 発売 
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Koto Concertos ― 遠藤千晶/箏協奏曲の軌跡(2枚組)

VZCG-8582〜2(CD)
2018年10月24日 発売 
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2018年9月5日発売

 

紅じょんから/雪と炎

VZCG-10574(12cmシングルCD)
2018年9月5日 発売 
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津軽民謡の若きトップランナー須藤圭子、おかげ様で今年デビュー30周年を迎えました。デビュー30周年記念曲「紅じょんから」では心を紅色に染めるあたたかい思い出を胸に今を強く生きる等身大の女性の想いを歌います。


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2018年3月〜6月発売作品

2018年3月28日発売

樋口一葉/春日とよ栄芝の小唄

VZCG-816(CD)
2018年3月28日 発売 
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『明治150年』の2018年、「たけくらべ」の世界を描いた知られざる名曲「樋口一葉」ほか全18曲を厳選!! 初CD化の作品も加えて、ビクター音源で構成。
ブックレットに全曲詞章を掲載。


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第二十一回日本伝統文化振興財団賞 [菊央雄司](地歌箏曲・平家)

VZBG-58(DVD)
2018年3月28日 発売 
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伝統芸能分野で将来いっそうの活躍が期待されるアーティストを毎年1名顕彰する「日本伝統文化振興財団賞」。平成29年度の受賞者、菊央雄司(箏曲地歌・平家)の技芸を紹介するDVD。


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2018年5月30日発売

おんな太兵衛~黒田節入り~/日本橋しぐれ

VZCG-10573(CD)
2018年5月30日 発売 
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伝統芸能分野で将来いっそうの活躍が期待されるアーティストを毎年1名顕彰する「日本伝統文化振興財団賞」。平成29年度の受賞者、菊央雄司(箏曲地歌・平家)の技芸を紹介するDVD。


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2018年6月27日発売

平成三十年、三十一年度 正派邦楽会准師範試験課題曲集 箏・三弦 古典/現代名曲集(28)

VZCG-817(CD)
2018年6月27日 発売 
assocbutt_or_buy._V371070157_

伝統芸能分野で将来いっそうの活躍が期待されるアーティストを毎年1名顕彰する「日本伝統文化振興財団賞」。平成29年度の受賞者、菊央雄司(箏曲地歌・平家)の技芸を紹介するDVD。


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第二十一回日本伝統文化振興財団賞・第六回中島勝祐創作賞 贈呈式

日本伝統文化振興財団賞は、伝統文化の保存・振興・普及を目的とする当財団の顕彰事業の一環として設立された賞です。第二十一回の本年は、地歌・箏曲および平家(平曲)の演奏家、菊央雄司(きくおう ゆうじ)さんが受賞しました。また、長唄三味線演奏家で数多くの舞踊曲を作曲した東音中島勝祐(とうおん なかじま かつすけ)氏の功績を記念した中島勝祐創作賞の第六回受賞作品には、常磐津東蔵(ときわず とうぞう)さんの「宝船売り」が選ばれました。平成29年6月、東京の紀尾井小ホールで行なわれた両賞の贈呈式と記念演奏会についてお伝えします。

文:じゃぽマガジン編集部

写真:ヒダキトモコ

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第二十一回 日本伝統文化振興財団賞
第六回 中島勝祐創作賞

平成29年6月1日(木)、東京・四谷の紀尾井小ホールにおいて第二十一回日本伝統文化振興財団賞および第六回中島勝祐創作賞の贈呈式が開催されました。
開会の辞に続いて当財団の藤本草理事長の挨拶があり、受賞者のお二人が紹介されました。


田中英機選考委員
田中英機選考委員

来賓の文化庁、熊本達哉文化戦略官からは「お二人にはこの受賞を機にますます芸を高められ、いっそうの活躍を期待する」との祝辞が寄せられました。

第二十一回日本伝統文化振興財団賞の選考委員を代表して田中英機さんから、選考経過と菊央雄司さんへの贈賞理由が紹介されました。大阪に軸足をおいた地歌箏曲演奏家としての高い評価、胡弓での活躍に加え、伝承者が極めて少ない平家(平曲)に取り組んでいることも認められたと語り、将来に向けてますますの活躍を期待すると締めくくられました。


賞状と目録贈呈に続いて、前回の受賞者である地歌箏曲・胡弓演奏家の川瀬露秋さんから菊央さんに花束が贈られました。


菊央さんは受賞の挨拶として、「大阪の芸を、誇りをもって継承していくことの大切さを改めて感じている」と今後の決意を述べ、平家を勉強しているのは次の世代につなげるためとの思いも語りました。


続いて第六回中島勝祐創作賞の贈呈に移り、審査委員の久保田敏子さんから受賞作「宝船売り」について、「常磐津らしい洒脱さをもって、歌詞のいいところを活かしている」との講評がありました。


常磐津東蔵さん

前回受賞の若獅子会の代表、福原百之助さんから花束を贈られた常磐津東蔵さんは、大阪での修業時代に常磐津を一緒に学んだ中島勝祐氏との思い出や、「宝船売り」を作曲した経緯などを披露しました。

 

最後に、当財団設立基金元、JVCケンウッド・ビクターエンタテインメントの斉藤正明社長から寄せられた挨拶文が紹介されて、贈呈式が閉じられました。


休憩をはさんで、両賞の受賞記念演奏に移りました。


菊央雄司さんは、地歌の端歌物「江戸土産(えどみやげ)」を歌と三弦(三味線)で演奏しました。プログラムの解説には文化10(1813)年に大坂の中の芝居で上演された七変化舞踊「慣ちょっと七化(みなろうてちょっとななばけ)」にちなんだ曲とあり、上方を代表する地歌に、来場者は耳を傾けていました。



次に、中島勝祐創作賞受賞作品「宝船売り」が披露されました。常磐津東蔵さんがタテ三味線をつとめ、浄瑠璃、三味線に蔭囃子が加わって、会場はお正月のおめでたい楽しい気分にあふれました。

ロビーには当財団の顕彰事業や最近の活動を紹介するCD、DVDなどが展示され、中島勝祐師のお写真も飾られました。



また、今年没後20年となるビクター専属演奏家、市丸さん(1906~1997)のコーナーも設けられ、来場の皆さんの関心を呼んでいました。


受賞記念演奏 プログラム

第二十一回 日本伝統文化振興財団賞 受賞者 菊央 雄司

記念演奏 地歌「江戸土産(えどみやげ)」

歌・三弦 菊央雄司

 

第六回 中島勝祐創作賞 受賞作品 「宝船売り」

記念演奏 「宝船売り」 (常磐津東蔵 作曲)

浄瑠璃 常磐津和英太夫 常磐津松希太夫 常磐津千寿太夫
三味線 常磐津東蔵 岸澤式松
上調子 常磐津文字絵
囃 子 望月太意三郎 住田長祐 望月美沙輔