日本伝統文化振興財団 創立20周年 記念公演
2014年1月24日開催(メルパルクホール東京)
朗読、和の音楽、映像が融合したコンサート
文:じゃぽマガジン編集部
「花の色は移りにけりないたづらに 我が身世にふるながめせしまに」と詠んだ平安時代の絶世の美女、小野小町でさえ悩みが尽きなかった恋心は、今も昔も変わることはありません。箏独奏をバックに、コンサートの朗読は先ごろCD『百人一首〜恋の歌〜』で朗読を担当した加賀美幸子さん。
「その思いは『みそひともじ』、五七五七七を足した31文字の和歌に託され、いつしか百人一首として、時をこえ、今日まで歌い継がれているのです」と語り、若き新・純邦楽ユニット、WASABIのメンバー4人が奏でる、ゆったりとした悠久の時の流れをイメージさせるかのようなメイン・テーマ「いにしえの恋のうた」がホールに響き渡ります。
小町の恋の相手ともいわれる稀代のプレイボーイ、在原業平が詠んだ「ちはやぶる神代もきかず竜田川 からくれなゐに水くくるとは」が尺八の独奏とともに朗読されると、百人一首が現代の日本人に親しまれている例――お正月の風物詩となっている競技かるた、人気漫画『ちはやふる』や小学校低学年の国語教科書への掲載といった説明がありました。
いよいよコンサートのメイン企画が始まります。WASABIの各メンバーが担当楽器を実際に演奏して優しく分かりやすく紹介。
あわせて百人一首の中で投票により人気の高かった「恋のうた」の数々から、WASABIのメンバー4人と加賀美さんが選歌。各メンバーがその歌の心を感じ取って作曲したものを、今回、WASABIの新曲として披露しました。元となった歌と解説、新曲のタイトルと作曲者、担当楽器、作曲にあたってのコメントをご紹介します。
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峯雲
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作曲:市川 慎(箏、十七絃)
歌いながら演奏するお箏の古典には、百人一首から歌詞がとられた曲が数多くあります。この句は「千鳥の曲」の歌詞に使われています。都から離れて須磨で関守をする人が、遠くにいる愛する人を思う心の強さをイメージして作りました。(市川 慎)
天つ風
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作曲:元永 拓(尺八)
幼い頃「坊主めくり」をしましたが、お坊さんが好きなのではなく(笑)、乙女が帰っていく道を風の力で閉ざしてほしいという歌の気持ちと、空気や風を扱う尺八という楽器との共通点を感じました。風や雲の動きを尺八で、ゆったりとした「五節(ごせち)の舞」を箏の細かく流れるフレーズで表現しました。(元永 拓)
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続いてWASABIのライブ演奏。1stアルバム『WASABI』収録の「烈光」と日本の唱歌「ふるさと」、さらに最古の民謡といわれる富山県民謡「筑子(こきりこ)節」より「KOKIRIKO」が披露されます。「KOKIRIKO」ではメンバーと観客との三三七拍子などのやりとりが会場を大いに盛り上げ、第一部は終了。
(記事公開日:2014年02月28日)