全国劇場・音楽堂等アートマネジメント研修会2013特別プログラム
2013年2月14日(木)開催
(東京・国立オリンピック記念青少年総合センター)
2月13日から3日間にわたって国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された全国劇場・音楽堂等アートマネジメント研修会2013(主催:文化庁・社団法人 全国公立文化施設協会)。特別プログラムとして14日に行なわれた、口語訳による日本音楽の新しいエンターテインメント 邦楽オラトリオ―「幸魂奇魂―古事記より」―の模様をじゃぽ音っと編集部がお送りします。
邦楽器の音と声からなる、日本音楽の新しいエンターテインメント
文:じゃぽ音っと編集部
「アートが奏でる地域再生〜アートの交差点〜」というサブタイトルのついた全国劇場・音楽堂等アートマネジメント研修会2013。劇場・音楽堂等の管理・運営・事業に携わる施設の経営者や職員、担当者、アートマネジメント教育関係者やマネジメントに関心のある学生や聴講生が多数集まり、3日間にわたって東京代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにて行なわれました。さまざまな研修プログラムのなかで、口語訳による日本音楽の新しいエンターテインメント 邦楽オラトリオ―「幸魂奇魂(さきみたま くしみたま)―古事記より」―が特別プログラムとして14日に開催されました。
プログラムを企画した舞踊評論家(邦舞)の平野英俊氏がステージに登場、「古事記」編纂1300年の昨年3月に発表され、レコード大賞企画賞を受けるなど各方面から好評を博している2枚組CD「幸魂 奇魂(さきみたま くしみたま)―古事記より―」の構成・全作曲を手掛けた横笛奏者の藤舎貴生(とうしゃ きしょう)さんと藤本草日本伝統文化振興財団理事長を迎え入れ、第一部「邦楽公演開催ワークショップ」が始まります。平野氏は「日本の楽器は嘘をつかないと昨日のセミナーでお話しましたが、それにふさわしい演奏会をみなさんに聴いていただきたいと思い、今回こういった邦楽を取り上げたわけです」と語り、藤本理事長を聞き手に、藤舎貴生さんが「幸魂 奇魂―古事記より―」の制作エピソードや長唄の囃子方からみた日本における伝統音楽の公演についての現状を紹介していくスタイルのワークショップが始まりました。
第一部「邦楽公演開催ワークショップ」 対談:藤本草理事長、藤舎貴生さん
(1)横笛奏者、藤舎貴生と「幸魂 奇魂」
(2)たび重なる偶然、震災と古事記1300年
(3)日本音楽の古典が「エンターテインメント」になりうるか
ワークショップの最後に「これを機会に日本の音楽っていいじゃないかと思っていただければいいな、幸いだなと思っております」と語った藤舎貴生さん。第二部「幸魂奇魂(さきみたま くしみたま)」では笛の貴生さんを含むコンパクトな15人編成が舞台に現れ、「幸魂 奇魂」全9曲より、抜粋ヴァージョンの3曲から「八俣の大蛇(やまたのおろち)」が始まります。サワリをたっぷりと効かせた三味線群に唄方が入り、囃子方や太鼓、笛が一斉に鳴り響く音を聴くうちにいつの間にか引き込まれ、口語体の朗読が物語を明快に語ります。続く「沼河比売(ぬなかわひめ)」はしっとりとした美しい箏をバックにしたのびやかな唄が印象的で、伝統音楽をベースにした日本の歌曲として楽しめます。ラストの「幸魂奇魂」は朗読、三味線に唄、囃子と笛、太鼓、箏が渾然一体となった迫力の演奏。昨年2月京都の南座で公演された際は、総勢48名からなる大編成でしたが、こうしたコンパクトな編成であっても、その核となるエッセンスを十分に感じることができました。自然に溶けあい響きあう邦楽器の音と声は、会場の大小や楽器編成の多寡といった条件をあまり選ばず、むしろその場の空気や観客のほうに馴染んでいくような、懐の深い豊かな音響として感じられ、実にあっという間の楽しいひとときとなりました。
■関連作品
■演奏曲
「八俣の大蛇(やまたのおろち)」
「沼河比売(ぬなかわひめ)」
「幸魂奇魂(さきみたま くしみたま)」
笛:藤舎貴生 朗読:一色采子 唄:今藤政貴、杵屋巳之助、今藤政子 三味線:杵屋栄八郎、杵屋勝十朗、杵屋栄之丞 囃子:藤舎円秀、堅田喜三郎、望月秀幸、梅屋喜三郎 箏:中川敏裕、高畠一郎 太鼓:田代誠
(記事公開日:2013年03月07日)