新・純邦楽ユニット WASABI デビューライブ

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2012年6月27日(水)開催
(東京・青山CAY)

今年3月にデビューCD「WASABI」を発表した4人の新・純邦楽ユニット、WASABI。津軽三味線ユニット吉田兄弟の兄・良一郎さんの学校公演プロジェクトとして2008年に発足、WA=和、SABI=サビ(盛り上がり)という意味から命名され、2010年には市川慎さん(箏・十七弦)が加入し、4人組に。日々進化を続ける新進の4人が東京のライブハウス、青山CAY(カイ)にてデビューライブを行ないました。

和楽器の若手4名が集結、記念すべき東京のデビューライブ

文:じゃぽ音っと編集部

 ビル地下にある青山CAYには、用意された席からは溢れるほどの観客が集まっている。そこへ颯爽と現われた4人はオープニング・ナンバー「東雲(しののめ)」をゆったり確かめるようにプレイ、さらにスピーディーな「烈光」が会場を駆け抜け、早くも観客は4人に釘づけ。太鼓の美鵬直三朗さんが柔らかい語り口でMCをきりだし、各メンバーの温かいMCを聞いていると、間近でこうした生の演奏が聴けるうれしさとあいまって、その一挙一動にひき寄せられる。

 続いて尺八の元永拓さん作曲の「航海」の心洗われるメロディ、さらにWASABI全員が作曲した「ZERO」。津軽三味線のフレーズだけの導入部に始まり、尺八、箏、鈴の音が絡みあった、和楽器個々の特色を生かしたインタープレイはジャズのようでもあった。市川慎さん作曲「紅蓮(ぐれん)」はメインのメロディを尺八が担い、他の楽器との一体感があるグルーヴ感たっぷりのナンバー。

 こうしたWASABIらしさを感じさせる3曲ののち、MCで結成から今までの経緯が語られる。民謡界で交流のあった吉田良一郎さんと美鵬直三朗さんに、尺八の元永拓さんで学校公演を中心にWASABIがスタート、さらなる可能性を箏・十七弦の市川慎さんの加入に見い出し、ついに4人が集結。それまでの学校公演での生徒たちとの温かい交流のうかがえる話に続き、生徒たちの前で披露しながら独自のアレンジに昇華してきた「ふるさと」が披露される。ゆったりとした、どこか沖縄の三線を思わせる津軽三味線のイントロから、尺八と三味線で流れるおなじみのメロディ、ハープのような箏の美しい響き、笛など小物を駆使した音の彩りが添えられ、耳を傾けているとアンサンブルの美しさに胸を打たれる。

「KOKIRIKO」
「KOKIRIKO」

 「朝霧」は結成初期からのナンバーで、津軽三味線を軸に、尺八と三味線のコール・アンド・レスポンスやロックのリフに通じるフレーズを織り交ぜた、鋭くしなやかなサウンド。そこへ田楽の流れを汲んだ日本で最古の民謡といわれる「こきりこ節」をモチーフにした「KOKIRIKO」がたたみかける。各メンバーのソロ・パートをリレーでつなぎ、観客からの大きな手拍子を得て、会場はお祭りのように賑やか。

 次の市川慎さん作曲の「イレブン」、吉田良一郎さん作曲の「NEMURE」はどちらも新曲。曲の名前は暫定的とのことだが、セッションを軸に曲を熟成させていこうという思いが感じられる。現段階での「イレブン」のクールな響きや、「NEMURE」の穏やかで広がりのある響きは、どこか現代音楽やアンビエント・ミュージックに通じるモダンな印象を受け、今後が楽しみな一幕となった。

WASABI
WASABI

 ラスト・ナンバーは「光耀(こうよう)」。津軽三味線、箏、尺八、太鼓のソロ・リレーが心地よく、ソロの直後、会場からはジャズ・コンサートのような拍手も。そして全員が一丸となった演奏に観客の耳がいっそう集中して聴き入っていた。終演後の拍手は鳴り止まず、アンコールへ。

 アンコールは、音楽をWASABIが担当し、このたび7月4日にブルーレイディスクでリリースされた戦国ブログ型朗読劇「SAMURAI.com 叢雲-MURAKUMO-」より「MURAKUMO」。4つの和楽器による、ドラマティックな響きが印象的だった。そして「この曲からWASABIが始まったと思います」と吉田良一郎さんが語り、ふたたび「烈光」へ。4人の繰り出す音が風や光のように会場を駆け巡り、観客の惜しみない拍手や歓声とともに、記念すべき東京のデビューライブの締めくくりを飾った。

関連作品

WASABI

VZCG-762(CD)
2012年3月21日 発売 
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プログラム

  • 東雲(しののめ)
  • 烈光(れっこう)
  • 航海(こうかい)
  • ZERO
  • 紅蓮(ぐれん)
  • ふるさと
  • 朝霧(あさぎり)
  • KOKIRIKO
  • イレブン(新曲)
  • NEMURE(新曲)
  • 光耀(こうよう)

〈アンコール〉

  • MURAKUMO
  • 烈光

プロフィール

WASABI

津軽三味線ユニット吉田兄弟の兄、吉田良一郎が自身の学校公演プロジェクトとして、元永拓(尺八)、美鵬直三朗(太鼓・鳴り物)と2008年に活動を開始。2010年に市川慎(箏・十七絃)が加入し、“WASABI”となる。吉田兄弟らとの特別公演“和の祭典”、朗読劇“一期一会”「マクベス」、戦国ブログ型朗読劇「SAMURAI.com 叢雲 -MURAKUMO-」などに参加。2012年3月には待望のファーストアルバムを発表。WA=和、SABI=サビ(盛り上がり)という意味合いから命名。

吉田良一郎(よしだ・りょういちろう/津軽三味線)Yoshida Ryoichiro

5歳で三味線を手にし、その後、津軽三味線と出会う。弟・健一と共に数々の津軽三味線の大会で入賞を重ね注目される。吉田兄弟として1999年にメジャーデビュー、2003年には全米デビューを果たす。コンサート活動を続ける中で感じた「このままでは民謡も、和楽器も衰退してしまう」という危機感から、伝統音楽の良さを伝えるための学校公演に取り組む。これがWASABIの出発点となる。

元永 拓(もとなが・ひろむ/尺八)Motonaga Hiromu

4歳からヴァイオリン、中学生ではトロンボーン、高校ではギターを手にする。一方で、幼少から少年時代を海外で過ごし、“和”に憧れを持つようになる。大学の邦楽サークルで尺八を手にし、馴染んできた“演奏すること”と“和”がつながる。NHK邦楽技能者育成会第44期生に合格後、師匠について技術を一から学び直す。

市川 慎(いちかわ・しん/箏・十七絃)Ichikawa Shin

生田流箏曲「清絃会」家元の家に生まれるが、中学からギターを始める。TVで後の師匠となる箏奏者がギター音楽を思わせるオリジナル曲を演奏するのを観て衝撃を受け、高校卒業後、沢井比河流氏、沢井一恵氏の門下に入る。内弟子としての毎日は想像以上に厳しかったが、その後コンクール入賞やリサイタル出演などで若手演奏家として注目される。

美鵬直三朗(びほう・なおさぶろう/太鼓・鳴り物)Bihou Naosaburo

中学、高校と美鵬流創始者である祖父の稽古場へ通ったが、嫌々取り組む毎日で怒られてばかりいた。一度、民謡の世界から離れるが、太鼓が嫌いではない自分に気づき再び取り組む。今は、美鵬流を学びたいという人に自分の持っている技術を渡していくことが、“美鵬”の名を残すことにつながると考えている。

吉田桐子(『WASABI』ライナーノーツより抜粋)

WASABI公式ホームページ
http://yoshida-brothers.jp/rroom/
WASABI公式Facebook
http://www.facebook.com/wasabi.official

(記事公開日:2012年06月27日)