江戸里神楽 トップジャズ・ギタリスト競演 東京発・伝統WA感動「KAGURA meets JAZZ」

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2013年9月20日(金)開催
東京・三越劇場

日本古来からの伝統芸「神楽」とアメリカ生まれの即興音楽「ジャズ」。この両者がめぐり合い、新しい世界を創り出すコンサート、東京発・伝統WA感動「KAGURA meets JAZZ」が2013年9月20日三越劇場で行なわれました。神楽から松本源之助社中、ジャズからは渡辺香津美トリオ、さらにジャズとの共演ほかボーダレスな活躍で知られる長唄三味線演奏家・杵屋裕光さんを音楽監督に迎え、祝祭ムードいっぱいの楽しいコンサートとなりました。

神楽とジャズが地球上の音楽としてひとつに

文:じゃぽマガジン編集部

 三越劇場の緞帳が上がり、渡辺香津美トリオによる「ジャムセッション」がスタート。ジャズの帝王マイルス・デイヴィスの代表曲のひとつ「Milestones(マイルストーンズ)」、日本人にはおなじみの「上を向いて歩こう」、渡辺香津美さん作曲によるユーモラスな「遠州燕返し」と軽妙な演奏。3人のインタープレイが作り出す、楽しい空気に酔いしれます。

 続いて登場するのは江戸里神楽(えど・さとかぐら)土師(はじ)流の松本源之助社中。賑やかなお囃子が雰囲気を盛り上げ、すっかりお祭りムード。民俗芸能の江戸里神楽は、その起源を出雲(島根県)に持ち、鷲宮(わしのみや/埼玉県)を経て江戸に入り、江戸時代中期には現在の形になったといわれています。土師(はじ)流は「面白く愉快に演じる」ことを特徴にしており、獅子舞の動きや鯛を釣る所作があり、最後に「めでたし、めでたし」と締めくくります。

 「神楽と申しますのは、古代の日本人にとりまして、人間の魂そのものといってよいかと思います」という三隅治雄さんの解説に続き、四代目松本源之助さんと五代目松本源之助さんによる、神楽のワークショップが始まります。おかめ、ひょっとこなどのお面を実際に身に着けての紹介、また観客の女性と男性を舞台にあげ、実際に装束を着用して舞台をひと回り。四代目松本源之助さんの楽しいお話が会場を大いに盛り上げます。

 三隅さんによると、神楽とジャズのコラボレーションはすでに十数年前から神楽が盛んな大分県庄内町で行なわれているとのこと。ジャズが時代とともにさまざまなスタイルを生み出し世界中に広まったように、日本の神楽も古代から時代とともに歌舞伎や能などいろいろな芸能を創り出す源となっているというお話。これら二つがはたしてどんな風にコラボレートするのか、「KAGURA meets JAZZ 祝祭」のステージへの期待が高まります。

 いよいよステージの幕開け。神楽のお囃子と杵屋裕光さんの三味線の音をバックに獅子舞が舞台へ躍りだし、観客席の方向からエレキギターを抱えた渡辺香津美さんが登場。子守歌「ねんねんころりよ…」のメロディを奏でながら徐々にジャズ・トリオの音が大きくなっていきます。そこへふたたび神楽のお囃子。神楽とジャズの音が交互に演奏されるなか、踊り手が一人二役のお面をかぶり、表裏でみせるお面を替えながら、神楽とジャズを踊ります。また四代目松本源之助さんの鉦(かね)は両方の音楽に力強く響いています。さらにジャズ、神楽がだんだんとスリリングに交差していき、獅子舞や踊り手の動きは最高潮。エンディングにはすべての楽器が合わさって一斉に鳴り響き、開放的かつ祝祭的なムードが三越劇場を包み込むなかでお開きとなりました。

 神楽とジャズがあわさり、地球上にあるひとつの音楽として聴こえてくると同時に、心と体が躍り出す楽しいひとときでした。


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プログラム

〈第一部〉

「ジャムセッション」

渡辺香津美トリオ (ギター:渡辺香津美、ベース:納 浩一、ドラム:大槻“KALTA”英宣)

「江戸里神楽/寿獅子」

松本源之助社中

〈第二部〉

「お話」神楽とジャズの庶民性

芸能学会会長 三隅治雄

「ワークショップ」神楽の装束と楽器音楽を体験指導

四代目 松本源之助、五代目 松本源之助

「KAGURA meets JAZZ 祝祭」

松本源之助社中 渡辺香津美トリオ 杵屋裕光によるスペシャルコンボ

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主催:東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京発・伝統WA感動実行委員会

東京文化発信プロジェクトとは-
東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施しているプロジェクトです。 都内各地での文化創造拠点の形成や子供・青少年への創造体験の機会の提供により、多くの人々が新たな文化の創造に主体的に関わる環境を整えるとともに、国際フェスティバルの開催等を通じて、新たな東京文化を創造し、世界に向けて発信していきます。 www.bh-project.jp/

プロフィール

四代目 松本源之助

江戸里神楽土師(はじ)流四代目家元。 1924年、荒川区西日暮里生まれ。7歳より三代目・父のもとで江戸里神楽を学ぶ。第二次世界大戦終結後、アメリカ軍のアーニーパイル劇団に入り日本の神楽を紹介。またお神楽学校を組織し後継者育成に努める。現代音楽や演劇を取り入れた創作神楽を次々と発表し、1976年・1983年芸術祭優秀賞受賞、1984年芸術祭大衆芸能部門大賞受賞、1990年芸術選奨文部大臣賞受賞、2003年の勲四等瑞宝章受章など数々の受賞歴がある。 アメリカ、カナダ、ヨーロッパ各地において公演活動を行い、アジア舞踊フェスティバルにも参加。2008年名誉都民の称号を受ける。

渡辺香津美

ギタリスト・コンポーザー・プロデューサー 1953年東京都生まれ。17歳で衝撃のアルバムデビュー。驚異の天才ギタリスト出現と騒がれて以来43年にわたり、常に最先端のインストゥルメンタル・ミュージックを創造し第一線で活躍。1979年、坂本龍一と結成したオールスターバンド〈KYLIN(キリン)〉を皮切りに、YMOのワールドツアーへの参加が、KAZUMIの名を世界的なものとする。1980年の記録的な大ヒットアルバム〈トチカ〉に代表されるジャズ・フュージョン界のアイコンとしてフィールドを牽引する。歴史に残る音楽家をはじめ、内外のトップミュージシャンとの共演数も群を抜き、国内はもとより世界中で公演を行う。

杵屋裕光

三味線、音楽監督 1960年、杵屋和四蔵(江戸時代からの伝統を受け継ぐ長唄三味線演奏家)の次男として生まれる。3歳で初舞台、16歳で長唄杵勝派名取師範「杵屋裕光」を名乗る。以後、歌舞伎座、メトロポリタンオペラハウスなど国内外の歌舞伎公演、舞踊公演等で長唄三味線演奏家・作曲家として活動。1990年には三味線FUNKバンド「THE家元」にも参加、その際ポーランドでの世界音楽祭で第2位を獲得。今まで多くの洋楽演奏家と共演し、高い評価を得ている。

(公演プログラムより転載)

(記事公開日:2013年10月24日)