スピカ能07「道成寺/土蜘蛛」
(札幌メディアパーク・スピカ)
北海道・札幌メディアパーク・スピカで9月28、29日にわたって開催され、たいへんな盛況となった能舞台の模様をお届けします。これらの模様は映像化され、2008年春に上下二巻に分けてDVD化される予定ですので、その予告編としてもご覧いただけます。
※これらの公演を収めたDVD―能と花の二夜― 能「土蜘蛛」/狂言「鐘の音」、―能と花の二夜― 能「道成寺~赤頭」)は発売中です。
「観世喜正、野村萬斎ほか出演の舞台が、
来春DVD発売予定」
文:じゃぽ音っと編集部
生け花とのコラボレーション、円形ホールでの能舞台
9月28日(金)、29日(土)と札幌メディアパーク・スピカで「――能と花の二夜――」と題し、狂言「六地蔵」(シテ:野村萬斎)・能「土蜘蛛」(前シテ:観世喜之、後シテ:永島忠侈)、狂言「鐘の音」(シテ:野村萬斎)・能「道成寺」(シテ:観世喜正)が演じられた。タイトルにある「花の」とは、草月流第四代家元・勅使河原茜さんによる生け花とのコラボレーションからつけられている。
メディアパーク・スピカは円形の多目的ホールで、そこに能舞台がつくられる。円形なので、普段能楽堂では見ることの出来ない位置にも客席があり、視界を遮る柱もないので、能楽堂で見るのとはまた違った楽しみ方がある。また、初めて観る方も楽しめるように、シテ方による事前の演目解説があったり、難しい言葉の解説もプリントで配られたので、慣れていないと聞き取りづらいせりふなどもだいぶわかる。
観ごたえたっぷりの演目
「土蜘蛛」は、蜘蛛の糸を何度も投げかけたりして、非常に派手で人気のある演目である。蜘蛛の精のいる塚が蜘蛛の巣になっていて、蜘蛛の巣を破って出てくるなど、激しい動きが多く、飽きさせない。その日のスピカは8mの竹を広がるように何本も立て、そこに8つに割った竹をはりめぐらせ、動きのある背景になっていた。勅使河原家元によれば、それはまさに「蜘蛛の糸」をイメージしたそうだ。
「道成寺」は能を観たことがない人でも題名は知っている演目だと思う。演者にとって非常に重要な演目であるが、観る側にとっても緊張感を持って観る演目であると思う。北海道では23年ぶりの上演だったそうだ。「道成寺」はシテ方は「鐘入り」など有名な見せ場があり、もちろん気迫のこもった演技だったが、囃子方にとってもやはり気の抜けない演目で、一音一音の間など、大変緊張感のあるよい舞台だった。背景は前日と同じく竹をベースに作られていたが、真ん中に花が生けられていた。「道成寺」の舞台は春であることと、鐘に怨みをもつ女の激しい情念のようなものをイメージしたという。
今回の公演はDVD化予定
スピカは約1200人の客席数だが、両日ともほぼ満席。今年で4回目となるスピカ能狂言シリーズは固定ファンも多くいるようだ。しかし、残念ながらスピカは来年の3月で閉館とのこと。せっかく札幌に根付いた能の公演をどこか別の場所ででも続けていってほしいと思う。(ちなみに、現在札幌では、市立能楽堂を設立しようという運動もある)
今回の公演は、2008年3月下旬にDVDとして日本伝統文化振興財団から二巻に分けて発売予定(注)。公演以外に、当日スピカ内特設会場で開催されていた「作り物展」の様子や、演者へのインタビュー、舞台美術メイキングなど特典映像も収録される。
写真提供 :(1)(2)大森美樹、(3)〜(6)STVメディアフィールズ21 撮影:須田守政(FIXE)
舞台美術:勅使河原茜(草月流家元)
●来春発売のDVD収録内容(予定)
本編:<第一巻>狂言「鐘の音」、花いけ、能「土蜘蛛」 <第二巻>能「道成寺」
特典映像:舞台挨拶、出演者インタビュー、作り物展解説、舞台美術メイキング ほか
DVD機能:高画質ワイド画面、字幕切替(日本語/英語、本編完全収録)、マルチアングル(2方向切替)
(注)二巻とも、2008年8月20日発売。
(記事公開日:2007年09月28日)