第十八回日本伝統文化振興財団賞贈呈式/第三回中島勝祐創作賞 贈呈式

  • 文字サイズ:

伝統文化の保存・振興・普及を目的とする、当財団の顕彰事業の一環として設立された日本伝統文化振興財団賞。第十八回の受賞者は日本舞踊・上方舞(かみがたまい)の山村若(やまむら わか)氏。長唄三味線演奏家で数多くの舞踊曲を作曲した東音中島勝祐氏の功績を記念し創設された中島勝祐創作賞の第3回受賞作品は、萩岡松韻(はぎおか しょういん)氏作曲による「花の寺(はなのてら)」に決定いたしました。東京・紀尾井小ホールにて行なわれた二つの賞の贈呈式の模様をお伝えします。

第十八回日本伝統文化振興財団賞

第三回中島勝祐創作賞

あらたに日本舞踊が加わった財団賞、三回目を迎え定着した中島賞

文:じゃぽマガジン編集部

 第十八回日本伝統文化振興財団賞、ならびに第三回中島勝祐創作賞の贈呈式が2014年6月19日、紀尾井小ホールで開催されました。今年6月に就任した川口裕司理事長より「かけがえのない伝統文化を未来へとつなぐ、このひたすらな思いが大きく広がり、我々の心のよりどころである日本の伝統文化の将来が、ますます明るいものとなりますよう心から祈念します」との挨拶から式がスタート。文化庁文化財部長の山下和茂氏からの祝辞、衆議院議員小宮山泰子氏からの祝電が寄せられました。

川口裕司理事長
川口裕司理事長

今回の財団賞、山村若氏の選考経緯が紹介されました。選考委員を代表して駒井邦夫氏から「受賞者への副賞として第10回を契機にDVDに替わった財団賞ですが、上方舞の山村若さんの芸の素晴らしさは、まさに映像なしでは紹介しきれません。若さんは今年9月、三代目山村友五郎を襲名され、120年ぶりに友五郎の名跡が復活します。古典の伝承、地唄舞、歌舞伎舞踊、さらには文楽の振付、宝塚の振付といまや他方面に大活躍で東西に奔走され、大活躍されています」とのお話。受賞した山村若氏のお話「120年ぶりにこのたび三代目友五郎襲名の年にこのような大きな賞をいただけることに本当に感謝申し上げます」に会場は拍手に包まれました。

続いて中島勝祐創作賞の選考経緯が紹介されました。「今回9曲の応募があり、多ジャンルにわたっていて素晴らしい曲ばかりでした。一番たくさんの票をとられた萩岡先生の曲に審査員一同、異論なく決定しました。古典を大事にし、現代にあった創作をすることが理想だとおっしゃっておられた中島先生。まさに温故知新という言葉にぴったりな作品だと思います」との審査員・久保田敏子氏のお話。受賞作品の作曲者で山田流箏曲家の萩岡松韻氏は「上手く行きましたかどうかわかりませんけれども、私としては非常に気に入った曲でございます。それに対してこのようなご褒美を頂戴いたしまして、大変光栄なことだと思っております」と締めくくり、拍手が沸き上がります。


.

休憩をはさみ、山村若氏による記念舞踊、上方舞「猩々(しょうじょう)」が始まります。能「猩々」から題材をとったおめでたい内容で、「猩々」とは海中にすみ酒を好むという伝説上の霊獣。月夜に酒を汲み舞を舞う場面が見どころで、はんなりとした雰囲気に惹きこまれます。お座敷の舞として発展した、上方舞の粋を感じるひと幕となりました。

中島賞受賞曲の記念演奏「花の寺」は、能や歌舞伎でもおなじみの安珍清姫伝説で知られる道成寺(どうじょうじ)を題材にして作られた曲。桜づくしから花吹雪へと広がる前半部と「わらべ唄」の手鞠唄から始まる後半部からなる構成。道成寺と美しくはかない花の情景を織り交ぜ、お囃子と箏、三味線が「花の寺」の情景を美しく紡いでいきます。終演後、盛んな拍手が寄せられ、幕を閉じました。


.

さまざまな伝統芸能分野から、今回あらたに日本舞踊の上方舞が加わった日本伝統文化振興財団賞。三回目を迎え、創作邦楽曲を顕彰する賞としてすっかり定着した中島勝祐創作賞。二つの賞の贈呈式は、華やいだ貴重なひとときとなりました。

撮影:ヒダキトモコ

プログラム

第十八回 日本伝統文化振興財団賞 受賞者

山村若(上方舞)

記念舞踊
上方舞「猩々(しょうじょう)」

歌・三弦 菊原光治
小鼓 藤舎呂英
大鼓 望月太津之
太鼓 梅屋右近
笛 福原徹彦

第三回 中島勝祐創作賞 受賞者

萩岡松韻

記念演奏
《受賞曲》「花の寺」

唄・箏 萩岡松韻、萩岡未貴、萩岡信乃
三味線 杵屋五三助、杵屋五助
十七弦 田中奈央一
笛 中川善雄
小鼓 堅田喜三久、堅田新十郎
大鼓 堅田喜三郎

 

 

中島勝祐創作賞〈第三回〉 「花の寺」

VZCG-796(CD)
2014年11月19日 発売 
assocbutt_or_buy._V371070157_


.

(記事公開日:2014年07月18日)