郷みん’S ワンマンライブ IN ギンザニッパーズ
2008年3月 7日(金)開催
(銀座28’s Live)
日本郷土民謡協会に在籍する注目の若手3人、椿正範さん(津軽三味線)、澤瀉秋子さん(唄、太鼓)、松浦奏貴さん(踊り)が集結し、郷みん’Sを結成。3月7日、銀座にある28’s Liveにて初のライヴを行ない、満員の観衆は3人の個性から生み出される、日本の民謡の楽しさ、躍動感、素晴らしさを味わえる夜となりました。その模様をお伝えします。
民謡サラブレッズ登場!喝采で迎えよう
文:星川京児
民謡というジャンルは難しい。テレビやラジオの民謡番組から受ける、着物を着た人が尺八や太鼓を伴奏に朗々と歌い上げる、いわゆる正調民謡。最近はやりの津軽三味線バトルもまた民謡ならば、奄美、沖縄の島唄だって民謡なのだから。
もともと民謡という言葉は日本になかった。学者が英語のフォーク・ソングを「民謡」と翻訳しただけ。辞書などは「郷土の庶民の間に自然に発生し、その生活感情や民族性などを素朴に反映した歌謡」となっていても、作詞・作曲家がいても「地方色を帯びた新作歌謡(広辞苑)」として含めているのだから、ほとんどなんでもあり。作品によっては演歌など歌謡曲との境界線の見えないものもある。いずれにせよ、愛好家というかファンはそんなこと関係ないと、好きな歌、お気に入りの歌手を聴いている。
郷みん’S はメンバーが日本郷土民謡協会に属しているからという、なんともストレートな命名の若手トリオ。椿正範は津軽三味線、澤瀉秋子の唄と太鼓、松浦奏貴が踊りという組み合わせ。三人とも20代といっても、いずれも民謡大会で優勝経験を持つ手練れ。当然スタイルは協会お墨付きの正統派だ。歌と太鼓、三味線という形は珍しくないが、踊りが加わることによって、バリエーションが一挙に広がる。また全員が唄もとるし、レパートリーにも余裕が出来る。とにかく、民謡の現場にあまり詳しくない当方のような者にとっては新鮮というか、驚きました。なるほど、民謡は総合芸術だ、と。
また場所もいい。銀座、それもホールではなくライブ・ハウスに近いニッパーズである。当然、観客との距離は近い。近すぎる。唄が、響きが、動きが目の前なのだ。踊りなど、ほとんど動けるスペースがないのだから大変。動きの力のベクトルを、はみ出さないように抑制の方向にも持っていかなければならない。肉体的な負担は相当のはず。あの筋力と鍛錬は、まるでアイルランドのリバーダンスかプロのコサックダンス。
とはいえ、しっくりくるのは津軽や秋田の唄。どこか民謡=東北というイメージが刷り込まれているのだろうか。最後に津軽が集中するのは、椿・澤瀉という津軽三味線弾きがいるからか。なんといっても曲弾きは盛り上がるのは事実。
あのエンヤだって民謡ファミリーの出身。イギリスのフォーク・リヴァイヴァルが世界に果たした役割を、郷みん’Sが日本でもやってくれると嬉しいのだが。その可能性は十分ありと見た。後はみんなで応援しましょう。
■曲目
※15分間休憩 |
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星川京児(ほしかわ きょうじ)
1953年4月18日香川県生まれ。学生時代より様々な音楽活動を始める。そのうちに演奏したり作曲するより製作する方に興味を覚え、いつのまにかプロデューサー。民族音楽の専門誌を作ったりNHKの「世界の民族音楽」でDJを担当したりしながら、やがて民族音楽と純邦楽に中心を置いたCD、コンサート、番組製作が仕事に。モットーは「誰も聴いたことのない音を探して」。プロデュース作品『東京の夏音楽祭20周年記念DVD』をはじめ、関わってきたCD、映画、書籍、番組、イベントは多数。
(記事公開日:2008年03月07日)